■夏


DANCER




「やめなよ、そんな事」



もっともな事を堂々と言えるカジカにジャックは嫉妬する。今日はこんな石を見つけたと、袋から取り出してカジカは掌を広げてくる。

一週間ほど岩場巡りをしてきたというカジカは随分と日に灼けたようだ。サンバイザーも役に立たない様で、鼻の頭の皮が剥がれかかっている。

「結構陽射しがきついんだよ」
「もっとしっかりした帽子にすればいい」
「今度はジャックも一緒に行こうよ」
「やだ」
「なんで?」

信じられないという表情のカジカに、ジャックは毛布から身を起こす。標高の高いこの○に夏はまだ遠い。

「…」
「ここまで一緒に来たんだし、すぐそこだよ」
「うーん」
「食べるものもお互い違うし、大丈夫だと思うけどなあ」
「荷物増えるだろう」
「骨なんかその場においていけばいい。僕は平気だし。」

カジカはケラケラと声を立てて笑う。

「…」

それ以上言ってもジャックは態度を変えないと、いよいよカジカは悟ったのか、だけどまだ未練は捨てられないといった様子で「じゃあ、今度ね」と溜息交じり に引き下がる。

------はやく。



先延ばしにしたって何も変わりはしない。別に何があろうと僕は僕で僕のままだ。爪の形も、髪の先も、骨だって何も変わりはしない。そのままの姿で、君の前 に現れる。そう、僕は笑いさえした。君の事なんてお構いなしに、何度でも現れる。


「ジャックの馬鹿」


もしかして僕は君の怯えた様が見たいのだろうか。
そんな筈は無いと頭を振る。
もういやだ。

「わかってくれなくたっていいよ」


           ジャックの馬鹿、ばかばかばか。


「どんな花だって好きなのに」


僕は君の体になりたいのに。
どうして僕をどうにかしてくれないのかな。前はもっと早かったじゃないか。微かな記憶に揺れる景色。

-------憶えている




もう一週間経つ。
このままじゃまた君に会えなくなってしまう。


「お願い好きなように」

「一緒に…!」





お前、近寄ったって拒むだろう。
だけど、俺がどっか行ったら、責めてくるだろう。
一緒にいれば、色々欲しがって、手に負えないじゃないか。


夏の浜辺で渚手伸ばす。



(06/05/10)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送